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2010年9月9日 【ベトナム】
ベトナムは低コスト?日本は高コスト?

Brain Works Asia co.,Ltd
ディレクター 中嶋 和雄


ベトナムに滞在してビジネスしていれば、昨今のアジアブームも
あいまって、このところは多くの人から頻繁に質問や相談を受ける。
その中でよく聞かれるのが、「ベトナムなら安くできる」という、
ある意味で”神話”に近いことがある。


確かに、賃金水準は安く、2010年9月現在の円高基調を鑑みると、
ワーカーレベルで月1万円程度、大卒の新卒クラスで月2~3万円
程度で採用が出来る。
加えて、日本との生活物価水準差はおおよそ1:7~1:10くらいの
イメージで捉えることができる。


これだけみると、人員を投入して生産性をあげるサービスを
するような業種においては、人件費を大幅に削減することが期待できる。
そういった点では、正しい意見だともいえる。


一方、統計からすれば、ベトナムは大幅な貿易赤字の国である。
概要を見ると、輸出品の大部分が資源(原油)や一次産業品(農産物、水産物)、
縫製加工品であり、2次産業に関わる製品や部品の多くを海外からの
輸入に頼る、という構造である。
ご存知の方も多いと思うが、原油を輸出して製油を輸入しているのである。
現地調達が出来ず、輸入に頼らざるを得なくなるケースでは、コスト高
要因になるのだ。


また、2007年頃までの不動産バブルの影響もあり、近年は下落傾向に
あるとしても、用地取得やオフィス賃料、ホテル、住宅の賃料についても
期待しているほどは安くない。


例えば市街地でサービス業をスタートするにも、1坪換算で7~8千円程度、
場所によっては2万円を超えるところもあり、日本とあまり差がないことに
驚くこともある。もちろん、PCなどを調達する場合は違法コピーでも
利用しない限り、調達コストは日本と変わらない。


ひとつ言えるのは、GDPの格差や表面的な物価水準を見て
過度な低コスト期待をし過ぎないほうがいいということである。
これはベトナムのみならず、他のメコンエリアの国にもあてはまる。






昨今、日本では1品250円程度の居酒屋がトレンドになっているが、
ベトナムで日本食レストランを利用すると、1品の平均単価は同じ程度か、
少し高いくらいである。


もちろん海外と日本で食材の調達しやすさや市場環境など、様々な
違いがあるにしても、正直なところ、味のレベルではさして変わらない。
むしろ、日本の居酒屋のほうがおいしいことすらある。
それでも、日本人だけでなく、地元の人が日本食レストランを喜んで利用しているのだ。


成熟した市場で競争が激しく、更にはデフレも進行する日本のほうが
アジアの国と比較してコスト面でも相当に安くなっている側面も発見できる。
こうした視点も取り入れてみると、アジアでのビジネスチャンスは
広がるのではないだろうか?

 

 
 


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