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2010年9月22日 【ベトナム】
ベトナム人は合理主義?


Brain Works Asia co.,Ltd
田口 秀一

日本でいわれるベトナム人像に、まじめで勤勉、手先が起用ということがある。
私はベトナム人に対する研修講師もしている関係で、こういうことを話してみたりも
するのだが、当のベトナム人は必ずしもそうは思っていないようだ。
頷く人もいれば、首を横に振る人もいる。当然、ベトナム人といっても人それぞれだから、
人によって見解も違うだろうし、実際にそうでない人がいるのも当然だ。


一方で、私はベトナム人に対して、ある意味、合理主義だという印象を抱いている。
例えば、以下のような例が挙げられる。


・オートバイ等での走行時、交差点のかなり手前で対向車線へ入り左折する
  (交差点に差し掛かるかなり前から、対向車が来なければ曲がり始める)
・ちょっと(と言っても数十m)くらいなら、対向車線を逆走して目的地や交差点へ行く
・相手車線を横切らない左折、右折、直進なら赤信号でも無視して進行する
・下駄箱へスリッパを入れる際、スリッパを脱いでから手に取って入れるのではなく、
  そのまま足で下駄箱へ入れる
・扇風機のスイッチを足の指で押す(20代前半の女性が平然とやる)


私は、こういう事象から、


・ちょっとだけだからいいじゃない?
・手間が省けるんだからいいじゃない?
・結果が同じなんだからいいじゃない?


という考えを抱いているように感じるのだ。
最初に、「ある意味」合理的といったのは、合理性を追求しての合理性ではなく、
面倒くさいことや手間を省くための行動から生じていると感じるからだ。そして、
少なくとも、上記のような行動をするベトナム人本人は合理的だと考えているように思える。
実際、ベトナム人と会話すると、「その方が合理的だ」という言葉がよく出てくる。


上記の例は、確かに合理的とも取れるが、自己中心的考え方ともいえる。
それをすることによる自分や相手への安全性への影響や他人への迷惑、
道徳観念、マナー(行儀)というものが、ほぼ無視されているように感じる。
日本でいう、「赤信号、みんなで渡れば怖くない」的な考え方だ。


最初に、ベトナム人はまじめで勤勉といわれている、という話を出したが、実際に
現地で仕事をしてみると、納期や品質、約束事に非常にルーズな人が多い。
もちろん、そうではない、とびきり優秀な人もいるのだが、割合的には
ルーズであることが標準なのかと思えるほど、多数派を占めている。


ベトナムは経済が発展しており、商品にこだわらなくても売れる、次の顧客をすぐに
得られるという面もあるが、上記の合理主義的考え方も影響しているように感じる。
先の例とも似てくるが、


・ちょっとだからいいでしょ
・大体同じだからいいでしょ
・言われたら直せばいいや


という雰囲気を強く感じるのだ。


どんなことでも、大体のところまでは誰でもできるし、すぐにできるものである。
そこからもう一歩進んで、こだわりのあるもの、品質のよいものに仕上げるのが
スキルであり、他の人との差の見せ所のはず。


しかし、こだわりや品質の差を見せ付けるために最後の詰めをするのは
面倒な作業や困難な作業が伴い、時間や労力もかかる。


多くのベトナム人は、この一番重要な部分を面倒くさがって避けていると感じる。
仕事の仕方を知らないというスキル的な面もあるが、大体できていればいい、
言われたら直せばいい、という、いわゆる手抜きや妥協というものを、本人達は
合理性だと捉えているように感じるのだ。


これは価値観の問題かもしれない。せっかく途中まで仕事をしても、最後で
手を抜いてしまうと意味がなく、そこまでの努力に意味がなくなる。だから、
最後の詰めの作業こそ、必要な時間と労力を割いて(当然、とにかく時間や労力を
かければいいというものではない)しっかりやろう、ということに意義を見出せるか
どうかということだ。仕上げまできちんとできてこそ、一人前の仕事であるという
ことを理解させなければならない。いわゆるザ・ラストパーソンの考え方だ。


組織に属する以上、仕事を最初から最後まで1人で全てやるということは
まずない。他者と協力し、チームで行うものだ。よって、個人最適を押し通すと、
全体最適がうまくいかなくなる。しかし、多くのベトナム人は、まだまだ
個人主義的な思考が強く、組織的な仕事の仕方や組織のあり方というものを
理解していない。しかし、ベトナム人にとってチームワークが苦手というのは、
ベトナム人自身も理解してきており、逆にその必要性も感じ始めている。


弊社は、そのように前向きに自らの課題を改善しようという人や企業に対して、
教育事業を通じて、意義のある活動をしていきたいと考えている。

 


 




 


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