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2011年1月13日 【ベトナム】
日本は静かな国

GABB Vietnam JSC
代表 玉置 哲也

久しぶりにベトナムから日本に戻って最初に感じたことがある。
それは「日本は静かな国」ということだ。


ベトナムは、まさに「喧騒」という言葉がぴったりである。
道路には数多くのバイクと車が走っており、
赤信号などおかまいなしに我先にと交差点に突っ込む。
普通に走っていても、割り込みや追い越しは当たり前。


また、ベトナム人の大半はバックミラーを見ていないのではないかと思う。
さすがに車のサイドミラーは見ているだろうが、
バイクのドライバーにいたっては、ほとんど見ていないといえる。
なぜなら、ベトナムは雨が降るとバイク用のカッパを被って走っているのであるが、
そのカッパを被るとバックミラーがすっぽり隠れるからである。


そんな中では、当然後ろを見て走っていないので、
後ろの車やバイクは自分の存在を伝えるために常にクラクションを鳴らしている。
もっとも、後ろを見ていないので存在を伝えるというよりは、
「邪魔だ!」という意思表示の方が多いが。
よって、街中ではクラクションの嵐である。
そこまでクラクションを鳴らすと、日本では間違いなく喧嘩になると思うが、
ベトナムでは平気でクラクションを鳴らしている。
それが知らず知らずに耳についてしまい、日本に帰ってくると静かに感じるのである。


しかし、騒音という意味で静かなのは良いが、すべてにおいて日本が静かではいけない。
経済や日本人の行動まで静かになってしまっては、日本の存在感はどんどん薄れていく。


例えば、私の住んでいる地域では韓国人も多いのだが、店でレジに並んでいると、
ほぼ間違いなく割り込んでくる。
とにかくレジにモノを置いたもの勝ちのような感じで、他に誰が並んでいようがお構いなし。
当然、そんな時には、こちらが先だと順番は守らせるが。
また、空港で出てくる荷物を待っていても人の前に平気で割り込み、
視線を遮る位置に立つなど日常茶飯事である。
もちろん、決してそれが良いということではない。
しかし、これから発展しようとしている国で、行儀良く順番を待っていては、
周囲から置いていかれてしまうのである。


今の日本は、経済発展も成し遂げ、モノがあふれかえっている。
そのため、今の子供など欲しいものがないのではないかと思う。
私が子供の頃は、テレビは白黒で(あるだけマシだが)ビデオなどは当然なく、
クーラーや自家用車など、庶民には、まだまだ普及していない時代であった。
まさに今のベトナムと同じような環境だったのである。


その頃の日本は、決して今のように「静か」ではなかったはずである。
皆、今より少しでも良い暮らしをしたい、美味しいものを食べたい、
綺麗な服を着て立派な家に住みたいと思い、日々を暮らしていたのである。
その時に、ただ待っているだけでは、いつまでたっても自分の順番は回ってこない。


今、静かな日本に必要なのは、順番待ちの行儀良さではなく、
割り込むくらいの厚かましさである。
そうしなければ、日本は行儀がよかったけれど、いつの間にかどこかに消えていったねと
言われる日が遠からず現実のものになってしまう。


 




 


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