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2011年1月24日 【ベトナム】
現地企業におけるテトのリスク

Brain Works Asia co.,Ltd
田口 秀一

年が明けて2011年になった。


職種にもよるが、年末年始は1年で一番長期の休みが得やすい時期でもあるため、
日頃とは違った時間の過ごし方をした方が多いことと思う。


人によって過ごし方は違えど、家でゆっくりしたり、旅行に行ったり、
普段なかなかできない趣味にふけったりと、どれも特別なことだといえる。
寝正月も正月特有の時間の過ごし方のひとつである。


ベトナムでは、前回のブログにも書いたとおり、一般的には元旦だけが休みである。
本格的な休みはテト(旧正月)で、今年は2月の初めだ。
このテトはベトナム人にとって1年で一番大きなイベントである。
皆、料理の材料や正月飾りなどを買い込み、盛大にテトを祝うのである。


そして、連休が少ないベトナムにおいて、ダントツで長い休みの期間でもある。
長い企業では、2週間強も休みになる。
特に製造業がそうで、これには、田舎から出てきているワーカーへの配慮もあるようだ。
何しろ、ベトナムはまだまだ交通事情が悪い。
田舎に帰るのに、移動で片道2~3日も費やす人もいるのだ。


さて、あまり長く休むと休みボケになってしまうものだが、
これは日本に限らず、ベトナム人も同じだ。


というか、一般的なベトナム人は、テト前からテトモードになって盛り上がり、
何にも優先してテトの準備をする。
そして、テト明けは1ヶ月くらい、盛り上がった気分が収まらず、仕事に集中できないというのである。
1ヶ月というのは言い過ぎかもれいないが、お祭り気分がなかなか抜けない、というのは事実のようだ。


もちろん、全員ではない。きちっと切り替えて仕事に臨むビジネスパーソンもいる。
しかし、なかなか切り替えがきかない人が多く、
その中でも、一番評判が悪いものが役所の対応である。


ベトナムの役所の対応は、普段から目に余るくらい悪い。
暇に任せてパソコンでゲームをしている職員などはまだよい。
いかにも面倒くさそうな表情で対応する職員も、こちらが我慢すれば実害はない。


普段の対応で一番評判が悪いのは、期限を守らない、言うことが毎回違う、という点である。
こちらが申請したことに対し、○月○日に結果が出るので、また来てください、と言いつつ、
当日に行くと、まだ出ていないということが多いのである。
忙しいとか、上司の承認が出ていない、など理由は様々だが、こちらには関係ないことである。
そして、彼らは決して、忙しい(らしい)仕事をこなすために残業などしていない。


もうひとつ、言うことが違うという点も非常に迷惑である。
申請書類の不備などについて、1回目に行ったときと、2回目に行ったときでは言うことが違うのだ。
また、不備についても、1回で全て指摘してくれればいいが、そうではない。
指摘されたことを修正して再度申請すると、今度は別のことを指摘してくるのだ。
これにはベトナム人も参っているらしいが、役所はそういうものだから、と諦めモードである。


1年ほど前に、ベトナム人の役所の職員の前で講演する機会があった。
日本からの投資を呼び込むためにはどうすればよいか、というテーマであったが、
私はその場で、思い切ってこの件を言ってみた。


そして、投資を呼び込みたければ、まずは役人の姿勢を改めるべきだという私の発言に対し、
驚いたことに、出席者の職員の中に肯定的に受け止めている人が多数いた。
苦笑いしながらも頷き、メモを取っているのだ。


講演終了後には、よい内容だったと言って何名かの受講者が名刺交換をしに来たのだが、
来たのは若い方ばかりであった。
若い世代の中には、問題を感じている人もいるのだと実感できた事象であった。


テト明けは1ヶ月くらい、仕事に身が入らない人が多いという話をしたが、
まさに役所はその最たるものである。
よって、ベトナムへの進出をお考えの企業は、このことを念頭に入れておく必要がある。
2~3月はほぼ手続きが進まないと考えておいた方がよいだろう。


テトはベトナム人にとって最大のイベントだが、企業にとっては、
大きなリスクとなるのである。


役所の件を抜きにしても、一般企業でも大きな影響がある。


よくあるのは、テト明けの出勤日にスタッフが無断で出社しないことだ。
帰省した先での活動やテト休みの期間中に知人から聞いた話などが元で、
無断で転職してしまうのである。


また、テト前にボーナスを支払うのが一般的だが、これもリスクとなる。
スタッフが、貰うものも貰ったし、ということで転職に踏み切るタイミングとなるのだ。


全ては述べないが、その他にも、様々な問題が発生する。


現地の企業で仕事をする身としては、テトを手放しで祝えない理由が、このあたりにある。
何かと問題が起こりやすい時期なのだ。


現地ならではのリスク管理が求められるのである。



 




 


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