アジアブログ

 

 
 

2011年10月11日 【アジア全般】
説明力不足の日本からの脱却

株式会社カナリア書房 代表
Brain Works Asia co.,Ltd
佐々木 紀行



――日本人は口下手で、しかし、誠実な仕事を忠実にこなし、
良質の製品やサービスを生み出す民族。


これはアジアだけでなく、世界における日本人像である。
間違っていない。でも不足感がある。


1980年台、天下のアメリカが凋落の一途を辿り、
代わって世界経済の主役に躍り出たのが日本である。
『ジャパン・アズ・ナンバーワン』という言葉でもてはやされたように、
日本のきめ細やかなサービス品質と、厳格な工程管理のもとの合理化、
高品質化への取り組みが評価される結果となった。
  しかし、考えてみれば、それ以前の日本の製品は欧米諸国にとってみれば、
「アジアの一メーカーがジワジワと台頭してきた」程度の認識しかなかったはずだ。
それが、アメリカの凋落で、にわかに桧舞台にあがってしまった。
日本製品がここまで世界の人々に高評価を受けることになったのはここ20年くらいのことだ。
まず、その認識に立ち返りたい。


今、世界市場、特にアジア市場で何が起きているのか?
それは、ご存知のとおり、韓国勢の躍進である。
ここベトナムにおいても、韓国勢の躍進は目覚しい。
数年前までは、世界的にはセカンドクラスのブランドだったサムスン、
LGが今では、メジャーブランドにのし上がっている。
一方で、世界の人々から賞賛を得た日本製品の影は薄い。
ベトナムだけでなく、アジア各国でも同じような傾向が見られる。
この構図、前出のアメリカと日本の浮沈の変遷と似てはいまいか?


韓国勢の躍進のひとつには、徹底した情報発信にある。
ベトナムだけを見ても、日本との情報発信力には歴然の差がある。
地場に根付いてビジネスを行うバイタリティ溢れる民族という認識は
衆目の一致するところであるが、
国をあげてテレビ、新聞、雑誌、企業ごの販売戦略まで徹底して攻める。
それがようやく功を奏してきたようだ。


約10年前、ある電気店でLGの洗濯機を買ったことがある。
店員が言うには、日本の某有名ブランドの製品とほぼ同じ部品が使われているという。
しかし、価格差は2~3万円。ブランド信仰のない私は迷わずLGの洗濯機を購入したが、
帰宅後、妻にこっぴどく怒られた記憶がある。「買うなら日本製品でしょう」と。
その当時、韓国製品は、日本製品との差は、品質もイメージもかなり大きなものがあった。
だからこそ、韓国企業は、自分たちの商品のPRに必死だった。イメージ広告を打ち出し、
キャンペーンを展開し、多くの消費者に自分たちの商品の良さを体感してもらう。
価格メリットもわかりやすく説明する。これは言うは易し、行なうは難し。
韓国勢にとって、ここ10年は雌伏の期間だっただろう。


一方で、日本企業はここ10年どうだっただろうか? 
景気後退の中、自らの商品にあぐらをかく企業はいないとはいえ、グローバル化が叫ばれる中、
自らの製品の優位性を見直し、人々に問いかけることをしてきただろうか。
海外、特にアジアにおいては、いまだ『ジャパン・アズ・ナンバーワン』のプライドが横たわり、
めまぐるしく変化する現代の“ゲリラ戦”に対応してきれていないのではないかとも思う。


――日本の商品は素晴らしいと思う。でも、何が素晴らしいかはよくわかっていない。
――日本という響きには憧れる。でも、何が良いのかはわかっていない。

 
これは、ベトナム人に日本のこと、日本製品に聞いた際に返ってきた答えだ。
どこの国にいっても実はこんなものかもしれない。
日本人はこの「何が○○なのかわかっていない」ことについて、真摯に受け止めるべきであろう。
実はこれが、これから世界で戦う強力な武器になる。日本人的な感覚で言えば、
「すべて言わなくてもわかる」なのかもしれないが、
一歩外に出れば、「言わなければ、わかってくれない」ことばかりなのだ。

 
2011年11月、当社はホーチミン市で「JAPAN STYLE CENTER」をオープンさせる。
日本の商品をベトナムの方々に体感してもらうべく、
トレンドから伝統文化まで豊富なラインナップを揃える予定だ。


「JAPAN STYLE CENTER」が入る予定のクレセントモール建設現場


まさに日本の情報発信基地にしていきたい。
併せて、日本文化や商品をわかりやすく紹介する
フリー誌「JAPAN STYLE MAGAZINE」をすでに発行している。




ベトナムで発刊している「Japan Style Magazine」


これらの取り組みで、日本のファン作りに一役買いたいと思っているが、
その前に日本の“説明力”向上を果たしたいと思っている。
「日本の商品は高品質だから・・・」
そんな日本人的感覚は通用しない。
そのことをこのホーチミンから日本に対して発信していきたいと思う。


 


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