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2011年10月20日 【中国】
人民代表選挙のお知らせ

北京華通広運物流有限公司
柳田 洋






私が住んでいるアパートメントのエレベーターホールに貼り出された「公告」です。


内容は朝陽区の人民代表選挙のお知らせです。
簡単に翻訳すると、「法律に従って朝陽区の人民代表選挙を行うので、
北京市戸籍を持つ18歳以上の市民は選挙登録所に行って登録をしてください」
と書いてあります。
「公告」を出しているのは、北京市朝陽区選挙委員会です。


日本では「中国は中国共産党の一党独裁体制だから、国民に選挙権は与えられていない」
と認識している人が多いと思いますが、この人民代表の選挙制度は以前からあります。
朝陽区民が朝陽区の人民代表を選び、朝陽区の人民代表が北京市の人民代表を選び、
北京市の人民代表が全国人民代表を選び、全国人民代表が毎年3月、
全人代で国家的案件の議決に参加することによって、
国民の民意を国政に反映させるのです。


ただ、問題は、こうした選挙システムはあるものの、
当選者枠3人のところに候補者が3人しか立候補しない出来レースだったり、
住民の直接選挙より、不透明な間接選挙の比率が大きかったりすることによって、
中国共産党に都合の良い人ばかりが、人民代表に当選してきたことでした。


しかし、最近は、中国も国民の権利意識の高まりにより、
政治改革は待ったなしのところまで来ています。
このため中国政府も、落選者が出るいわゆる「差額選挙」を義務付けたり、
住民の直接選挙の比率を上げることを明言したりと、
より民意を反映させられる政治システムの構築に積極的に取り組んでいます。
私は北京に15年間住んでいて、初めて人民代表選挙の「公告」を見ましたが、
これも政治改革の一環なのでしょう。


「自ら変わらなければ、国民から敵とみなされる」。
「Change or die」。
中国共産党のそんな焦りと恐怖が、
この1枚の「公告」からひしひしと伝わってきます。



 


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