アジアブログ

 

 

2012年3月26日 【アジア全般】
完璧を求め過ぎる日本人対応は“しんどい”

ブレインワークスグループ CEO 
近藤 昇



日本は世界の中で最もストレスが溜まる国である。
先進国の中でも異常に自殺者が多いし、
うつ病患者も100万人近くいると伝えるメディアもあった。
ビジネスに限らないが、感覚的には年々ストレス社会が悪化していると感じる。
原因はなんだろうか?
専門家に言わせればそれぞれの見地から様々な見解が出てくるだろう。
それだけ複雑な先進国特有の現代病ともいえるし、
一説では、日本人の遺伝子がストレスを溜めやすいとの指摘もある。
まあ、私はその分野の専門家ではない。
ビジネスをする立場で考えるのが常である。
私が思うに大きな原因のひとつは、
サービスレベルを高めることを追及しすぎているのだと確信している。

日本人は、世界を観光客として巡ったり、
外国などでゴルフをする時のマナーは、世界一行儀がよい、とよく言われる。
実際、アジアでもこの事は実感する。
しかし、日本国内の実態と比べてどうだろうか?
単刀直入に言うと、日本人は世界一わがままでクレームが多い国民である。
消費者の立場だけではなかなか気づかないが、
企業側として顧客対応を考え、実践する機会があると
たとえアルバイトの身でも簡単に実感することができる。
要するに今の日本人のお客さんの大半がなぜかピリピリしているのである。
確かに、日本は世界でもダントツでハイレベルのサービスが充実している国である。
そんな日本でも、ひどいサービスをする人は存在する。
こういう人にはクレームを言うのは当然だ。
しかし、モンスターペアレントと揶揄されるように
やたらめったら親が学校の先生のクレームを言う姿を想像すると
日本という国に失望せざるを得ない。

皆が、サービスレベルの向上に邁進してきた結果、
人間が一番心地よいと感じる水準を越えてしまっているのが日本の現実だと思う。
アジアに行くと特に感じるわけである。
サービスを受ける側も提供する側もゴール無きサービス改善を期待し、
それに応えるという無意味なビジネスを繰り返している状態だと思う。

こんな環境に慣れた日本人は、観光客として短期で、アジアや
世界に出かけるときは行儀が良い。
ところが、いざ、ビジネスで日本の外へ、となると厄介な存在になる。

今、日本の企業はアジアに向けて動き出したばかりである。
これからはもっと加速度的にアジア進出が増えるだろう。
私は、早くそうなって欲しいと思う。
様々な現場で体験を積んで欲しい。
理由はシンプルだ。
早く、日本人の壁をとっぱらって欲しいからだ。
“日本の外”目線で、当該の国を見たり、
その国の人に接することができる人はまだまだ少ない。
ほとんどの人が今の日本と比べようとする。
そして、良し悪しを議論したり、日本目線でのビジネスチャンスを見つけ出そうとする。
一部、すばらしい感性の方もいるが、大方の人は、“今の日本人”感覚なのある。

こういう人の対応は骨が折れる。
いわば、加点主義ではなく減点主義なのだ。
今の日本の基準と比べて、例えば、ベトナムやカンボジアなどを比較する。
あるいは、「ベトナムのレストランは・・・、タクシーは・・・」と会話が始まる。
1回目ぐらいはこれでも良い。
しかし、何回もその地に足を運び、
時間が経過してもその視点から脱却できないのが今の日本人なのだ。




  

  



ひとつの考え方として、私は加点主義をお薦めしている。

例えば、40年ぐらい前の日本と比べて、
加点主義で見れば、その国に対する印象もその国の人との付き合い方も変わる。
自然とビジネスチャンスの見え方が変わる。
もうひとつ付け加えると、新興国あたりでビジネスする時の苦労も想像ができるようになる。
私達が色々とアジアビジネス支援のお手伝いをしていて、一番かみ合わないのが、
「日本の会社だったら・・・、日本人だったら・・・これぐらいできて当然でしょ?」
という人。
こういう人とはアジアビジネスは難しい。
そうではなくて、日本とは違う別世界のビジネスなのだから、
理想を目指してもできないこともある、と察して理解できる人が良い。
そもそも、日本は理想を追いすぎて、
今、世界で最もビジネスをするのが“しんどい”国になっている。
アジアに出てまで、そんなモードでいると誰も相手にしてくれなくなるのがオチだ。

私の考えるアジアビジネスは『商売の原点はアジアにあり』である。
シンプルに考えて、40年前ぐらいのアジアの国に、
20年前、10年前ぐらいの日本のサービスレベルを持ち込むのが良い。
ストレスもあまり溜まらない。
ストレスを溜めて体を壊して、ビジネスが仮に成長しても、
「それで良いのか、今の日本?」
と問いたくなる今日この頃だ。
もちろん、今の日本の中にもアジアで役立つことは多い。
例えば、業務改善や品質確保についての仕事のプロセスなどを大切にするのは当然。
だからといって、それをいきなり相手に要求するのは間違いなのである。




  

  






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