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2012年3月29日 【中国】
銀行の中小企業ローン

北京華通広運物流有限公司
柳田 洋





写真は北京の地方銀行・北京銀行の新商品、
中小企業ローン「短貸宝(どぅあんだいばお)」
の広告です。


「手続き簡単、申し込みは易しくて、
入金も速い」のが売りのようです。
「短貸宝があれば、ビジネスチャンスを
逃しません」と書かれています。


この「短貸宝」、調べてみたところ、
不動産を担保にするローンで、
担保にする不動産の評価額の
80%まで貸してくれるのだそうです。
金利は貸し出し基準金利プラス10%
とのことですので、
1-3年のローンであれば、
6.65%+10%=年利7.32%と、
ヤミ金の年利240-360%と比べると、
はるかに良心的な利率となっています。


銀行がこうした中小企業ローンを
売り出した背景には、
昨年、中国政府が打ち出した
金融引き締め政策で、
資金繰りがつかなくなって、
倒産したり、夜逃げしたりした
中小企業が続出したことがあります。


当時、中国の銀行は金融引き締めで
政府から融資枠を限られたため、
優良顧客である国有企業に対して
優先的に融資をしました。
その一方、
信用力が劣る中小企業に対しては、
貸し渋り、貸し剥がしを行ったため、
多くの中小企業が
高利のヤミ金に手を出しました。
しかし、年利240-360%の金利など、
まともな商売をやっていたら
返せるはずもなく、
倒産や夜逃げをする中小企業が
続出してそれが社会問題となり、
温家宝首相が「銀行は本当に資金を
必要としている中小企業にカネを貸せ」
と直接指示するまでに至ったのです。


国家の政策一つで、
貸し渋り、貸し剥がしから一転して、
中小企業ローンを売り始める
中国の銀行。


「一放就乱、一収就死
(いーふぁんじょうるぁん、いーしょうじょうすー、
ちょっと緩めればすぐに乱れ、
ちょっと締めればすぐに死ぬ)」。


国家資本主義の弊害は、
こんなところにも表れているのです。



 


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