2012年6月7日
【アジア全般】
アジア固有の人材マネジメントは必要か(前編)
ブレインワークスグループ
CEO
近藤 昇
アジア全体を視野に入れてビジネス活動をしていると、
アジアに進出している日本人経営者の人材マネジメントに対する考え方が
二分されているのに気づく。
ひとつは、「アジアの人たちは日本人とは違うんだ」という発想で
マネジメントを考えることである。
「ベトナム人や中国人は日本人とは違う。
だから、それぞれの国に合わせたマネジメントを行うべきである」と。
アジアの人びとの特徴としてよくいわれる内容を以下にまとめてみよう。
まずアジアの人びとの共通の特徴として、
「品質・納期意識が低い」「残業が嫌い」「約束を守らない」
などがあげられる。
次に中国人の特徴として「個人主義」「人を騙す」、
ベトナム人の特徴として「家族主義」「ビジネススキルが低い」、
タイ人の特徴として「10を教えて1つわかる」などと
それぞれいわれることが多い。
日本と比べて会社や仕事に対する認識が根づいていないことで、
あるいは育った環境やビジネスの成熟度が異なることで、
上記のような特徴がみられるかもしれない。
しかし、それらの特徴は「教えればわかる」ことであり、
ビジネスが発展途上にある国特有の一時的な状態なのだ。
それを「アジアの人だから…」という表面的な理解にとどめ、
「各国の固有のマネジメントが必要だ」との結論に至る発想は短絡的すぎる。
各国の人びとの違いを明確にした上で、
それをポジティブに受け止め人材育成に注力できる人ならまだいい。
しかし実際には「日本人とアジアの人びとは違う。だからマネジメントは難しい」
とあきらめてしまう経営者が多い。
それでは"違い"を言い訳にして人材育成から逃げているだけだ。
これに対して日本人経営者のもうひとつの考え方とは、
「どの国の人間も根本は同じ」という発想でマネジメントを考えることである。
私は常に後者の主張を貫いているし、
この考えに賛同いただける日本人経営者もいる。
そもそも「国によって人は違う」と言い始めるときりがない。
たしかに個人差はあるだろう。
日本人にもいろんな人がいるように、
アジアの人にもいい人もいれば悪い人もいる。
国によって人の特徴がまったく異なるのであれば、
国ごとにマネジメントの方法を変える必要が出てきてしまう。
確かに、国ごとの違いに目をつけてマネジメントを展開するのも
ひとつの手ではある。
例えば中国の人材マネジメントに特化してビジネス展開し、
成功している日本企業もあるだろう。
中国に特化して展開していることが強みとなり、
ノウハウ化できるかもしれない。
しかし、人材育成に関してはやはり本質的には違うと思う。
どの国の人びとも、根っこは同じ人間である。
例えばどの国の人間も同じように貧困に苦しんでいるとしたら、
どんな行動を取るだろうか。
おそらく、皆ほぼ一緒の行動を取るはずである。
明日は過去の日本を振り返りながら、
アジア人材マネジメントの本質について書こうと思う。
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