アジアブログ

 

 
 

2009年1月16日 【ベトナム】
ここで暮らす外国人だからでき得る事

郷 康晴

 ベトナム(ホーチミン市)で生活を始めてから、この1月で8年が経ちました。

  その間に、日本食レストランの経営、日系企業2社での勤務などを経験してきました。現地雇用社員として日系企業で勤務させて頂いた5年の間には、製造現場や資材在庫管理をはじめ、生産、購買などの管理部門実務に携わりました。

  その中で、数多くのベトナム人工員や、中間管理者と働く機会を得ました。ともに働く中で、日本人管理者に対する“愚痴”なども含めた彼らの“生の声”を聞けたことが私にとって大きな財産になっています。現地人と密接に関わる事業を展開する上ではもちろん、私自身が、ここの言葉を使い、ここで暮らしているのですから。

  弊社設立に到った理由として、主に2つの事柄があります。

  その一つ目は、以前携わった購買管理の業務の中での出来事です。
  具体的には、“ベトナム人社員と私が入手した見積もりとの間に価格帯の大きな隔たり”があったこと。また、私が業者を検索している時に、「私の親から買って下さい」「知り合いから買ってくれたらあなたにも5%払います」など、といった同僚からの“売り込み”があったり、そうかと思えば「その業者は製造部の×××さんが経営しています」「この業者の納品数量は伝票上と違う」といった“密告”を受けたりしたことです。




  ⇒良きにつけ悪しきにつけ彼らがいかに購買業務に強い関心を持っているのかを実体験しました。

  二つ目としては、また、“マイナスの連鎖”を黙認せず、可能な限り排除すべきだと考えたことです。
  会社が不正に気付きながらも、事実を裏付け出来ずにないでいると、不正を正そうとする社員が不正をしている社内実力者から不当な扱いを被るのです。それが原因で退社してしまうという事例が頻繁に起こりました。

  ⇒優秀な社員が持っている能力を発揮する場を与えられない事を知り、心を痛めたのです。

  この2つの出来事を解決するために、現地調達業務の調査および改善のサービス提供を行う。それが弊社設立にいたる大きな理由でした。

  事業目的は“既にある不正を暴くこと”では決してありません。あくまでも“見える化”が目的なのです。自社で実施されている調達業務の実情を管理者の方々にも数字で知って頂く事が大切です。

  この事は、ベトナムにおける多くの外資系生産業の目下の課題「現地調達率の拡大」「現地スタッフの育成」さらには「現地業者の能力の底上げ」などの業務に着手する上で最も重要な事です。

  “見える化”することが“全社員が働きがいを感じ、会社が利益を出すための体質改善”の第一歩でもあると確信しています。

  また、この先ベトナムに進出される企業の皆様に推奨することは、“容易に現地人を信じない”ということです。これは現地人を信用しないでください、と言っているのではありません。彼らを信用し、更には信頼して仕事を任せる為の基盤となる知識を持って下さいということです。

  既に進出している多くの企業では、現地スタッフに指示を出し複数の業者より相見積もりを入手したのはいいが、現地の市場価格を知らないため、入手した全ての見積もりに担当者へのマージンが含まれているのを見抜く事が出来ない、といったような、どうしようもなく“社にとって不利益な事柄”が多く発生しているのです。

 皆さんもご承知の通り、多くのベトナム人は計り知れない能力を内に秘めています。

  ただ残念な事に、学習意欲はあっても環境が整っていないため、知識や経験に乏しいのが現状です。そのため、周囲に流されたり、目先の私欲に走ってしまうなど、将来を考えず今だけを見てしまう傾向にあるようです。

  しかし、私達のようにここ、ベトナムで生活する外国人が手本となり、目先の私利に走らず、しっかりとした目標を持って仕事をする事が、いかに大切で有意義な事か。そのことを理解させる事ができたら、彼らの能力を最大限に引き出す事ができると確信しています。

  私自身、ここで生活すると決心し「先を見据え今を生きる」を念頭に置き、「ここで暮らす外国人だからでき得る事」を事業として展開し、外資系企業と現地企業の間に架かる“落ちない橋”となるよう、まい進していくつもりです。

 
 


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