アジアブログ

 

 
 

2009年10月13日
どこの国でどんな商売をするかをいかに決めるか?

ブレインワークスグループ CEO 
近藤 昇



この1年、アジアでのマーケット開拓の話題で経済界はもちきりだ。
特に、一昨年から100年に1度と言われる世界不況が始まって以来、猫も杓子もビジネスに関わっているすべての人が、「これからはアジアだ」と言い出した感がある。
流されやすい日本の特徴だと言えば、それまでだが、さすがに、毎日毎日、アジア、アジアでは、いい加減にうんざりするし、ブームとして加熱しすぎだと思う。

創業時からアジアで活動してきた私たちから見ると、「そんなに浮かれている場合ではない、そんな楽観的な市場が待っているわけではない」と、ついつい警鐘を鳴らしたくなる。

いまさら言うまでもないが、なにもアジアの各国は、日本だけを見ているのではない。
まして、日本に対してだけビジネスの参入、企業の進出を歓迎しているわけではない。
世界を見渡せば日本のような先進国は他にも数多くあるわけだし、皆どこか似たような事情で、新マーケットとしてアジアを狙っているのだ。
当然、中国など急激な勢いで発展しようとしている新興国なども、アジアの覇権を握るべくアジアマーケットを攻めているし、経済成長の勢いにも乗って、その動きはスピーディーだ。




 
   


ざっくりとした印象で言えば、日本はアジアにおいてはすでに相当出遅れている。
最近は、大企業がようやくベトナムなどの市場開拓に本腰を入れ始めた感がある。
日本の大企業には大企業の事情があり、石橋を念入りに叩いて決断を下すことは仕方あるまい。
しかし、総じて受け入れる側(誘致する側)からしたら、動きは遅いと感じてしまう。
もっとも大企業は実力と知名度とパワーがあるので、私たちがとやかくいう話ではないが、
今のような経済の変革期、過渡期こそ、中堅・中小企業に積極果敢に進出して欲しいものだ。



 
 
 



ベトナム、タイ、中国など様々な発展形態を見るにつけ、『中堅・中小企業がどこのマーケットを狙うべきか?』を的確に判断するのは難しいだろうと、訪れるたびに実感する。
その大きな理由は幾つかあるが、ひとつは、成長・変化が著しいことだ。
例えば、世界の中でも成長著しい上海などは、1年も経てば、全く違う街に変貌している感がある。
当然、スピーディーな決断と行動、そして場合によっては迅速な撤退も求められる。




 
 
 
 


もうひとつ、それぞれの国には、日本とは全く異質な文化や生活があるということである。
日本感覚オンリーでの商売はどのアジアの国でも通用しない。
郷に入りては郷に従いつつ、自分たちのプレゼンスを打ち出していくには、綿密な戦略・戦術とともに、それを根気よく実行できる人材も必要だ。



 

 


そしてもうひとつは、生活実感を持つことも現地で商売するには必要だ。
特にBtoCの商売の場合は、現地体験なくして成功はおぼつかない。
数日訪れたぐらいでは生活実感は持てないし、まして、本当の消費者行動や発想などつかみようがない。
仮に、モノ知りコンサルタントや現地での実業経験者から話を聞いたとしても、たいして頼りにならないだろう。
アジアのようなこんな広いエリアで、こんな変化の激しい現状を俯瞰的に、網羅的に眺めて、ジャストフィットなアドバイス、サポートなどできようがないと思える。
それだけ、とてつもなくアジアは広いし多様性があるし、奥が深いのだ。
だからこそ、自分の肌で感じとることがまずは重要だ。



 
 
 


とはいえ、リスク要素、ハードルばかりを考えていてもなにも始まらない。はじめの一歩を踏み出すことが、中堅・中小企業にとってはなによりも大切だ。
どこの国で何を商売するかを決断しない限りなにも始まらない。

そこで、いくつかの手かがりを私なりに紹介したいと思う。
例えば、既に日本で成功している日本料理店をアジアのどこかで始めることを考えてみよう。



 
   



まずは、顧客をどうするか、だ。
日本人? 現地人? それとも外国人?
多店舗展開をしたいのか?
それとも単店舗のみか?
飲食のみならず、関連ビジネスも視野に入れているのか?
特に日本食なら食材の確保も課題だろう。
料理人はどうするか? 日本人を連れて行くか? 
現地で日本人を見つけるか?
それとも、現地の人を教育するか?
これらを決定するだけでも、日本のように簡単にはいかない。
法律や現地の物価の変動、質の高い社員確保、教育など、日本では比較的簡単な事まで、念入りに検討する必要がある。

 


 
   



列挙し始めればきりがないが、アジアで商売をする本来の意味を忘れないことも非常に大切である。
それは、自社の提供しようとするサービスの品質とサービスレベルをその国の現状にフィットさせることだと思う。
つまり、いくら日本食とはいえ、外国人が満足できる高級レストランが全くない国に、銀座にあるような一流店が進出してもミスマッチだろう。
また、寿司が流行っていない国では、日本の回転寿司レベルでも今は高級料理となるだろう。
要は、適材適所である。
無理はしないことだ。
わざわざ、余計なライバルが存在するところに行くのはナンセンスだし、過剰品質、サービスを持ち込んで難しい経営をする必要もない。
明らかにオーバーコストになるだろう。
そこまでしてアジアに出る必要があるのかということにもなる。できるだけマーケットや消費者の現状にマッチする選択をすることが重要である。

とはいえ、全く別のきっかけだけで始めても成功することもある。
“その国が好きになったから”
“その国の人と親しくなったから”
こんな単純な動機で選んだ方がうまくいったりするから商売は不思議なものだ。

 

 


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