アジアブログ

 

 
 

2010年4月16日
節目

Brain Works Asia co.,Ltd
田口 秀一


4月。 私が住むホーチミンは、1年間で一番暑い季節だ。
そして、もうすぐ乾季が終わり、何かと面倒な雨季に突入する。
私が好きな果物であるドリアンは、もうすぐ1年で1番収穫が多い
時期に入り、おいしいもの(人による)を安く食べられるようになる。


さて、一方、日本では入学シーズンであり、新入社員の入社シーズンだ。
新卒を採用する会社では、どの会社も一斉に新入社員が増え、
規模の差はあれど、入社式が行われるのが慣例だ。


ブレインワークスグループも同様で、今年も10数名の新入社員が
入社してきた。私はベトナムにいる関係上、TV会議を通して
入社式へ参加した。


日本にいる時はそれが当然であり、特に何も考えず、そんなものだと
思っていた。しかし、当然といえば当然だが、それは世界共通の
ことではない。日本でも地域が変われば成人式の時期が異なるように、
新入社員の入社時期は、国が変われば当然のように変わる。


では、ベトナムではどうか。答えは、「はっきり決まっていない」
である。そう、ベトナムでは、新入社員がある時期に一斉に入社して
くるということがないのだ。その都度、バラバラと入社してくる。


そして、ベトナムでは、大学の卒業式もバラバラであり、決まっていない。
また、大学に通いながら、アルバイトやパートタイムの形態で仕事を
している人が多い。人によっては、掛け持ちで、いくつもの会社で
働いているという人もいる。


だから、採用時に履歴書を見ると、新卒にも関わらずいくつもの
職務経歴を持っている人が、当然のようにたくさんいる。
むしろ、職歴のない人の方が珍しいだろう。また、それを履歴書に
書く際に、正社員としてのキャリアと全てごちゃ混ぜにして書いて
いるので、非常にわかりづらい。


日本では、若いのに職歴が3社もあり、3ヶ月から1年など短期の
キャリアが多い人は敬遠されがちである。しかし、ベトナムは
違うようだ。短期であろうと、キャリアは多い方がいい、と考えられている。

自分は、これだけの経験がある、ということがPRになるようだ。
このあたりは、面接をしていても、明らかに日本と違うと感じるところだ。


ところで、ホーチミンには四季がない。冒頭で述べたとおり、雨季と
乾季があるだけだ。気温は1年を通して、ほとんど変わらない。
よって、当然、衣替えもない。1年中、Tシャツ1枚で過ごせてしまうのだ。


新卒の入社時期、大学の卒業時期、会社への勤務形態、服装など、
いくつかの事例を紹介したが、総じて感じることとして、特にホーチミンに
住んでいると、「区切り」や「節目」といったものが、あまり感じられない。


そして、それは仕事の現場でもプライベートでも、見事に現れている。
テトという旧正月はベトナム人にとっては1年で最も重要なイベントだが、
たいていの会社では、休みが10日~2週間程度ある。十分長いのだが、
その後1ヶ月くらいは休み気分が取れず、仕事にも身が入らない人が 多いようだ。


また、通常時においても、遅刻、直前の早退や休暇申請、約束の失念や
ドタキャンなどが非常に多い。遠方の顧客などは、行く直前に電話でもして
確認しないと、すっぽかされた時の損失が大きいので注意が必要だ。


プライベートにおいては、結婚披露宴が代表的な例といえる。
基本的に人が多いほどいいと考えられているようで、友達や会社の同僚、
上司などを軒並み招待するのだが、それはまあいい。
象徴的なのは、開始と終わりだ。


まず、開始されるのは、招待状に記載されている開始時間の1.5時間後
くらいであるのが普通だ。日本人の感覚では、開始30分前くらいに
行こうものなら、まず誰もいないと考えていい。私は始めて招かれた時に
それをやってしまい、開始まで2時間近くも待ったものだ。


そして終わり。これには、明確な区切りがない。料理が一通り出て、
一息ついた頃に、皆、思い思いに帰り始める。誰かが明確に終わりを宣言
するわけではない。新郎新婦は、料理が終わりに差しかかった頃に出口付近に
行き、帰宅する人たちを待ち、見送る。




 


結局、時間に寛容(?)な結果、開始時と終了時を合わせると、新郎新婦は
かれこれ2時間近くも立って参加者を待つ時間に費やすというのだから驚く。
ちなみに、新郎新婦にとっては、幸せな時間なので気にならないようだ。


このように、ベトナム(今回はホーチミンのことだが)では明確に区切りが
ない場面をよく見かける。時間にルーズというのも、区切り、節目の
意識の希薄さと大いに関係しているように思う。


私は、これらについて、気候の影響がかなり大きいのではないかと
思っている。先に述べたように、ホーチミンには四季がない。
四季がない、というのは、生活面において、想像以上に大きな影響を及ぼす。
とりあえず、考えるべきことが、かなり少なくて済むといえる。


ハノイに行くと季節があるので、こうはいかない。ホーチミンの人が
ハノイの人に比べて、温厚でのんびりしているというのも、
季節感の影響が大きいであろうという意見には、多くの人が同意する。
季節のことなど考えなくても、生きていけるのだ。
全てを気候のせいにはしないが、生活習慣への影響はやはり大きい
のではないかと考えている。経済発展する中で、意識の持ち方もだいぶ
変わってきているとは感じるが、節目、区切り、時間間隔については、
より大きく変化しなければ、先進国とのビジネスは今以上には進まず、
発展も先細っていくだろう。




     
 


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