アジアブログ

 

 
 

2010年5月31日
ベトナムのサービス意識の変化

Brain Works Asia co.,Ltd
田口 秀一


ベトナムといえば、以前は安価な労働力を使った生産拠点
という印象が強かった。しかし、既にご存知の方も多いと思うが、
最近では有力なマーケットとして注目を集めている。

ベトナム人の給与水準からすれば、結構、高額であるはずの
携帯電話は、ごく一般的なツールとして普及しているし、
持っている機種もかなりグレードの高いものが多い。
高価な携帯電話を持っていることは、その人のステータスなのだ。

デジタルカメラ等の売れ行きもよいというし、日本食レストランは
富裕層のベトナム人顧客を呼び込むのに躍起になっている。
日本人駐在員がビールすら飲まずに食事だけして帰るのに対し、
ベトナム人は飲むは食うはで、落とす金の額が違うようだ。

そして、マーケットとしての発展に伴い、サービス向上の動きも
活発になっている。とりわけ、店員の教育に力を入れ始めている
傾向が伺えるが、それ以外の細かいところでも、変化が出始めて
いるのがうかがえる。

例えば、私はベトナム人のスタッフなどと同様に、朝食を路肩の
屋台で買って食べるのだが、そんな店ですら、サービス向上に
取り組んでいる。

通常、屋台で食べ物を買うと、一緒に爪楊枝やティッシュ
(手や口を拭くため)が付いてくる。これは普通、発泡スチロール製の
容器を輪ゴムで留める程度のことだ。
しかし、ある屋台では、ある日を境に爪楊枝とティッシュを
小さいビニール袋に入れ、ホチキス留めしたものをくれるようになった。

これは結構なインパクトだ。とりあえず見た目の清潔感が違う。
ベトナムの屋台で日本人が清潔感を感じることは、まず無いといっていい。
そのため、こんなことを気にする屋台が現れたというだけで、かなりの
進歩であるといえる。

以下に写真を掲載する。参考までに、こちらのコーヒーの容器の
写真も掲載しておく。




 


しかし、いかんせん日本人とベトナム人では、「当たり前」の基準が違う。
上記の件も、日本人からすれば、「その程度?」のことだろう。
よって、ベトナム人がサービスをしている気になっていても、実際には
日本人初めとした外国人から見れば、「全然駄目」というケースも多い。

私がローカルのコピー店に行ったときのことだ。
対応してくれたのは、50歳前くらいの女性。私からコピーの
原紙を受け取ると、古びたコピー機に差込み、必要部数を入力して
コピーを開始した。

古いコピー機のためか、途中で紙が詰まった。女性は詰まった
紙を取り、再びコピーを続ける。そして、終わった端からホチキスで
留め、私に渡す。

恐らく・・・、私は気になって、先ほど紙が詰まった箇所のコピーを
見てみる。やはりそうだ。紙詰まりをした箇所のページが抜けている。
紙詰まりしたから、ページ抜けするのでは・・・そういう感覚がないのだ。

また、せっかくホチキス留めしてくれるのだが、紙の端は揃っておらず
バラバラ、留める位置もまちまち。私がおばさんを呼び、紙を揃える
ように伝えると、おばさんは、「ああ、そうだったのか」と気づいたように
大きく頷いた。やはり、こういう意識がないのだ。とにかく、ホチキスで
留めること自体がサービスだと思っている。ただ、注意したものの、
その後は揃えるそぶりはするものの、ほとんど揃っていないのだが…。

サービスから少し話しがそれるが、ホチキス留めの件でいえば、
会社勤めする社員レベルでも、全く意図を理解していない行動をする。
例えば、見積書と注文書を印刷するように指示すると、それを
ホチキス留めして提出したりするのだ。その書類が、その後、
どのように扱われるのかを理解していないし、考えも及んでいないようだ。

このような状況であるから、サービス向上といっても、顧客が何を
望んでいるかまで、なかなか考えが回らない。サービス向上の意識が
芽生えているものの、外国人顧客を満足させるレベルになるには、
まだまだ時間がかかるだろう。

弊社はサービススタッフに対する接客やマナーの研修も実施している
のだが、こういう活動をベトナムのサービスレベルの底上げにつなげて
いきたいと考えている。


     
 


著作権について

本サイト内の記事、コンテンツ類の無断転載、複製および転送を禁じます。このような運営の妨げになる行為に関しては、損害賠償を求めることがあります。